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~統合失調症って知ってますか?~

統合失調症とは

 

主に、幻覚・妄想などを特徴とした精神疾患です。

 

おそらく多くの人にとって、“精神病”と言って頭に浮かぶのは、“統合失調症”なのではないかと思います。(よくわからないことを叫んでたり、一人でブツブツ言ってたり?みたいなことを想像するのでしょうか)

 

ただ、現場の感覚から言うと、ドラマや映画で見るような、激しい幻覚・妄想、人格破綻みたいなのは今はだいぶ少ないような・・・(もちろんそれに苦しんでいる方もいるのですが。早期に治療が開始される分、重症化してから発見されることが少ないのかな?)

 

 

統合失調症”、昔で言う“精神分裂病”、今ではものすごい広い概念、スペクトラム(グラデーション)で考えられるようになっています。

幻覚・妄想がひどく、いわゆる病院で行動制限がかかるような人もいれば、調子の悪い時だけちょっと現実と非現実の境目がわからなくなる、というくらいの人までいます。

 

自分の考えと他人の考えの区別がつきにくい(他者視点が理解しにくい=空気がよめない)という点では、今話題の自閉症スペクトラムと重なる部分もあるのではないかという研究もあります。

 

重い統合失調症の方でも、陰性症状と言われる症状がメインに出ているときは、うつ病と同じような状態に見えることもあります。

 

 

個人的に大きな特徴は、現実と非現実、自分と他人の境界線が曖昧になる、ということだと思います。

 

 

統合失調症は100人に1人。学校で言うなら学年に1人はいるくらい身近な病気です。(発症は思春期以降が多いですが)

 

 

要は、ふつーにいます。

ふつーに生活してます。

 

 

周りから見て、「なんかたまに疲れてるのかな?いつもと違うなーって時もあるよね。」「個性的な人だよね」くらいの感じです。

芸能人で公表されている人もたくさんいますし、芸術家なんかには非常に多いと思います。(診断を受けているかどうかは別として)

 

 

芸術系の仕事は、現実と非現実の間を表現することで魅力的なものになることがあるし、非現実のものを描くことも多いですもんね。

統合失調症の傾向を持っている人がその特性を生かしやすい分野なのではないかと思います。

 

現実と非現実を行き来できる、という点で、すごい才能。

夢と現実を行き来できる、と言ったら、とても魅力的に聞こえませんか?

 

 

が、厄介なのが、その非現実に現実が侵食されてしまったり、自分で現実・非現実の区別がわからなくなってしまうこと。

そして、その妄想や幻覚は、マイナスなものや怖いものが多いこと。そのことで、生活に支障が出ることが多いことです。

 

 

統合失調症統合失調症傾向という性格?と捉えたほうが自然かもしれませんね)と付き合うということがどういうことか、とてもわかりやすく教えてくださる本と出会いましたのでご紹介。

 

 

 

書籍紹介 

統合失調症日記 木村きりこ

 

 

日常のエピソードを漫画で伝えてくださってます。

発症から10年経ってから治療開始ということもあってなのか、統合失調症の特徴が結構強めに出ていらっしゃる方なのかな?と思います。

 

見えない人にとっては非常にわかりにくい、幻覚・幻聴についてもわかりやすく伝えてくださっています。

 

 とにかく面白い(言葉が違うかもしれませんが。漫画だからいいのか?)。

こういう世界がある、こういうふうに見えている、感じているというのがとても身近に感じられる、素晴らしい本した。

 

 

教育相談の中での統合失調症

 

思春期以降に発症することが多いため、教育相談の中で、重症化したケースにあまりお会いすることはないのですが、

 

「うーん、、、この子少し統合失調症傾向があるかもなぁ。あんまり負担かけずに過ごしていけるといいなぁ」と感じるケースはあります。

 

 

なぜ思春期以降なのか、というと、小さい時はみんな現実と非現実の境界線って曖昧だから!なのではないかと。

 

 

子供って発想が豊か、とはよく言いますよね。

夢で見たことを現実のことだと思い込んだりすることもよくあります。

 

お化けが見える、というのも実は本当かも。

画像の処理は、脳がしているわけなので、現実と非現実の区別がつかない状態だと、本当に目の前に画像が作り出されてしまうのです。

(もちろん、ケースによります。大人の気を引きたいだけのときもあります・・・)

 

 

それがだんだん成長するにつれて、情報処理がうまくなり、現実・非現実の区別がつくようになり、なんとなく現実のウェイトが大きくなってくる人が多いのですが、そうじゃない人もいます。

 

みんな現実主義・リアリスト、夢なんか信じない!っていう世界じゃつまんないですもんね(笑)

 

要は、バランスの問題だと思うのですが、現実を見ながら夢の部分も持ち続けたり、非現実を楽しめる余裕があったりするのは大切なことです。

 

 

ところが、非現実のウェイトが大きくなってくると、現実生活が破綻し始めます。

いつも夢の中にいる感じで、ふわふわしてしまったり、現実とのつながりがなくなってきて、引きこもりがちになったり。自分の思い込みが現実だと信じすぎて、周囲とトラブルになったり。

 

 

その兆候(不登校だったり、周囲とのトラブルだったりします)が出てきた時に、ストレスをかけすぎ、それが長期間続くと、どんどん非現実の世界に入っていって、なんだか遠くに行ってしまうように感じることがあるのです。

 

 

 

面接の中で、会話はしているのだけど、言葉がその子を通り抜けていってしまっているような、一緒にいるのだけど違うところにいるような感覚になる子と出会うことがあります。

 

そういう子が調子がいいときは、非常に豊かな才能を発揮したりします。ただ、ストレス状態が長くなると、だんだんエネルギー量が減っていって、才能を発揮する元気もなくなっていってしまいます。

 

もったいないなぁ。自分のペースで、ストレスを極力減らして生活してってほしいなぁ。自分のペースをきちんと身に付け、周囲の環境が整えば、この子の魅力にきっとみんな惹きつけられるのになぁ。

 

と思いながら、周囲の環境調整に当たることが多いです。

 

 

 

受診は早いほうがいい

 

 

研究がいろいろ進んでいるので、諸説アリなのかもしれませんが、統合失調症は脳疾患であると捉える視点もあります。

 

実際に、脳画像でも、脳に、穴あくんです。

 

簡単に言うと、脳が萎縮していく認知症みたいなものだと思うと、受け入れやすいかも?(語弊はあるのですが)

 

認知症も、治りはしないけど、早めに受診すれば進行をゆっくりにするお薬もあります。サポーティブな環境や周囲の働きかけによっては、進行度合いや日常生活への支障も随分違ってきます。

 

統合失調症も一緒じゃないかな?

 

薬をきちんと服薬するのは第一。

その上で、環境を整えれば、ふつーに生活できる。

調子の悪い時もあるかもしれないけど、早めに休んだり、対策をとれば、日常生活への支障も最低限に抑えることができる。

 

統合失調症傾向を持っている人でも、発症とまでいかないところでバランスを取って生活していくこともできると思います。

 

 

もちろん当事者の視点に立てば、大変なことは多いと思います。

周囲の理解を得るのも難しいこともあるかもしれません。

 

でも、100人に1人ですもん。学年に1人ですもん。絶対身の回りにもいるはず。

 

「うちのおばあちゃん、少し認知症気味かなぁ?」と同じ感覚で、「ちょっと統合失調症傾向あるのかなぁ?」病院行ってみようかな、と思えると、いいのかなぁと思ったり。

 

 

周囲の理解が少しでも高まるといいなぁ。

 

 

あとがき

 

普段、子育てに関する本を中心に手に取ることが多いのですが、とても面白い(言い方がおかしいかもしれませんが)本に出会ったので、ご紹介しました。

 

 統合失調症ASD自閉症スペクトラム)とかぶる部分があるのではないか、自閉症統合失調症は一つの病気の程度の違いなのでは?という研究もあります。

 

発達障害がこれだけ話題になっているのだから、統合失調症についてももう少し世間に知られていくようになってもいいのかな?

 

精神病!精神科!=怖い!のイメージの代表格なのでは?と思われる統合失調症ですが、怖くないです。普通にいます。面白い人や魅力的な人も多いです。

語弊を恐れずに言うなら、そういうタイプの人、そういう性格の人、調子を崩すと悪化しがちなタイプ(風邪引くといつも肺炎になる的な?)という感じでしょうか。

 

が、それが行き過ぎたり、大変なのに(受診せずに)無視してたりすると、生活に大きく支障がでます。

 

早めに気づいて、自分も周囲もその傾向との付き合い方を考えていくことが大切なのかなと思います。